
引き出しの奥に眠っていた、もう一人の「自分」
あれから四半世紀も時間が経ってしまった、20代の頃の話。
職場の上司の影響で、なんとなく楽しそうという単純な理由で船の免許を取った。
当時でいう「旧4級小型船舶」。
勢いで手にした免許だったけれど、やがて仕事が忙しくなり、結婚して、子どもが生まれて……。
気がつけば、すっかり縁が無くなっていた。
免許証もいつしか引き出しの奥にしまったまま、存在すら忘れかけていた。
そんな自分も今やアラフィフ。
子育ても落ち着き、自分の時間ができ始めたある日、ふと「これから何をして楽しもうか」と考えた。
そして不意に思い出したのが、風を切って何時間も滑走した海の記憶。
波の音、潮の匂い、エンジンの響き……。
記憶の引き出しを開けてみたら、そこにはもう一つの古き良き「自分の時間」が確かにあった。

再交付は思っていたよりずっとカンタンだった
失効しているのは百も承知で、気軽な気持ちでネットで調べてみたら、「再交付講習」のみで実技なしで免許を復活できると知ってビックリ。
ジェットスキーの事故が頻発し、知床の遊覧船沈没事故など、小型船舶の免許制度も厳しくなっていたからだ。
しかも、首都圏なら土日や平日の夜に数時間で終わる講習がチョコチョコあると分かり、「これならすぐに行けるじゃん!」と一気に気持ちが前向きに。
ずっと遠ざかっていた“船長の時間”が、急に現実味を帯びてきた瞬間だった。
忘れていたけど、ちゃんと残っていた「船のイメージ」
久々の講習に向けて、ネット上の情報から講義内容や試験内容を少し予習(復習?)してみた。
「あぁ、そうだ。車と逆で右側通行、右方優先だった。」
「緑と赤、どっちがどっちだっけ?」
「このマーク、なんだっけ?」
——思っていた以上に忘れていて、ちょっと焦った。
でも、いざ講習が始まると、法改正の内容から始まり、講師の説明も複雑な内容ではなかった。
動画教習の内容も事故の事例や原因・罰則を紹介する内容で理解しやすく、少しずつ記憶が戻ってきた。
船長の責任って、当時から車の運転手よりも重くて複雑な印象を持っているが、海でのルール、トラブルを避けるための知識、最新の安全対策……。
身が引き締まる一方だった。
講習の最後に確認テストがあったが、問題なく全問正解。
無事に終わって、ひと安心だった。
ただの免許じゃない、自分を取り戻す「きっかけ」
講習を無事に終えた数日後、自分で青海にある海事事務所を訪ねて再交付申請の手続きをしたら、その場ですぐに新しい免許証が発行される。
ほんの5~6分だ。
今の2級とは違って、ジェットスキーも乗れるし、期間限定ではあるものの「特定」付きだった。

手にした瞬間、不思議なくらい胸が高ぶった。
「また海に出られる。」
それは自分にとって“自由な時間への切符”のように感じた。
「特定」とはタクシーやバスの2種免許のように顧客を輸送できる資格だ。
遊覧船や屋形船のような船長もできるオマケ付き。
転職の機会になるかもしれない笑
昔の自分と、これからの自分をつなぐ、大切な船舶免許になった。

最初の航海は東京湾~運河クルーズにしよう
免許が戻った今、誰とどんなタイミングで船に乗ろうか、どこに行こうか……。
実のところ、船は車とは違って、わざわざ機会を作らないと乗ることはない。
買い物や誰かの送り迎えで船に乗ることはないからだ。
どこで、どんな船をレンタルしようか。
そんなことばかり考え、ネットを調べている。
まずは東京湾、それから東京周辺の運河やリバークルーズであろう。
少し慣れたら、横浜の海も走ってみようと思う。
安全第一、ゆっくりと船長の感覚を取り戻しながら、経験を積んでいきたい。
そして、いつかは孫を乗せて、海岸ではなく船からの海水浴を楽しみたい。
そして、東京や横浜の夜景を楽しむ機会もつくれるだろうか。
最後に──昔、船を動かしていたあなたへ
もし、引き出しの奥に眠っている小型船舶免許があるなら、もう一度手に取ってみませんか。
再交付という選択が、また新しい世界を広げてくれるかもしれません。
若さに任せて取ったあの頃とは違って、今なら「大人の遊び」として、もっと深く楽しめる海の時間が待っていると、私は期待しています。
よかったら、もう一度舵を握ってみましょう。
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kyosuke
Swing&Savor54(スイセイ ごーよん)の編集人にして埼玉在住のアラフィフ サラリーマン。老後の「行くとこ・やること」を考えながら、初老のゴルフ体験を発信していきます。練習環境をインドアゴルフに変えてから、シーズン平均スコアは100→87に激変中。なぜ?を備忘録として残しています。